保定=診察室では彼らの動きのコントロールが欠かせません

動物病院でペットに治療や処置を行う上で、彼らの動きを止める事は必要不可欠です。

しかし彼らを無理やりコントロールしようとすれば、ペットは緊張と不安のあまりともするとパニック状態に陥り、ますます治療が困難になります。

苦痛の少ない保定は彼らのストレスや恐怖心を軽減させ、嫌がることなく円滑で短時間の治療を可能にし、回復を早めることにもつながります。
ペットを抑える=保定と一言で言っても実は保定学という動物の力学・解剖学・生理学・行動学・心理学をベースとした1つの系統だった学問があるように、保定は習熟を要する専門技術の1つです。

我々動物病院スタッフが保定を行うに際しましては、事前に動物の種類・骨格・性格・習性などを把握しておくことで彼らの肉体的あるいは心理的苦痛は大きく軽減できます。

このようなことからもぜひホームドクターをお決めになり、健康診断や予防注射など日ごろから担当獣医師や看護師など動物病院スタッフにご自身のペットについてよく知っていただくことが大切になります。

ここではペットのストレス軽減のために飼い主の皆様が、ご自分のペットをご自身で抑え治療に共に参加される場合のために、予防注射や簡単な治療・処置のための保定法をいくつかご紹介いたします。保定のコツをマスターしていただくことはご家庭でのペットのケアにも役立つことと思います。


【四つ足で立った状態での保定(立位)】


ペットの首にご自分の腕(ビデオでは左手)を廻しながら頭を抱え込むようにします。
もう片方の手(ビデオでは右手)はペットの腰に廻しご自分の胸にペットを引き寄せご自身とペットの間に隙間を作らないようにします。肘で腰を押さえながら腕をペットのお腹に潜らせるようにして2本の前肢を掴みます。この際人差し指を左右の前肢の間に挟むと腕が抜けにくくなります。
ペットの頭はご自分の方へ向けながらご自分の左右の脇を締めるようにします。
特に力のあるペットや中型犬以上の犬などではご自分の重心を落とし、体重を使いながら覆い被さるようにするとしっかり押さえ込むことができます。


【横向きでねた状態の保定(横臥位)】


ペットが立った状態のまま背部から覆い被さるように両手を廻してペットの両前肢、両後肢をそれぞれの手で掴みます。この際人差し指をペットの肢と肢の間に挟むとしっかりと掴むことができます。ペットの体をご自分に寄りかからせるように四本の肢を診察台から徐じょに離していき横たわらせます。
動物が横たわったら前肢を持つ手(ビデオでは左手)の二の腕でペットの頭を押さえ、頭が動かないようにしてください。頭をしっかり押さえることによってペットは起き上がることが出来にくくなります。また四本の肢も指先よりも出来るだけご自分側で握ることによってペットは動きにくくなります。


【前肢からの採血】


犬座姿勢での保定を保ちながらご自分の体を使ってペットの体の正面を採血者側へ向けてください。
採血する側の前肢(ビデオでは右前肢)を肘を押し出すようにして前方へ差し出してください。


【対面姿勢での保定】


ペットと向かい合って頂き、彼らの腰を軽く押しお座りを促します。
頭をしっかりと押さえペットが振り向くことのないようにします。
首輪を装着している場合には首輪に手を掛けながら頭を押さえるとさらにしっかりと押さえることができます。

ペットの動きを制御するには不十分ですが、診察台の上で比較的落ち着いた状態の場合、予防注射などの簡単な皮下注射で便利な押さえ方です。

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